Ⅲ.結束バンドの材質による特性

 結束バンドには多様な材質のものがあり、材質によって耐候性、難燃性、耐薬品性、耐放射線性、耐湿性、耐熱性及びループ引張強度などに優れた特性を持っています。
 材質ではナイロン12、ナイロン66、ポリプロピレン、フッ素樹脂(テフゼル*)、ポリアセタール(デルリン**)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ステンレススチールなどを使用した製品があります。
 使用される環境、条件下で効果的に使用するためには、その環境や条件に最も適した材質の結束バンドを選択する必要があります。様々な環境に対して適切な材質の結束バンドを使用することで、無用な再施工などを回避でき、全体としてコストダウンに繋がります。

【耐湿性】

高湿度下に置かれたプラスティックは、水分を吸収します。そのため、材質の引張強度は著しく変化します。
ナイロン66は、湿度100%の中に置かれると8.5%の水分を吸収し、成形された直後に比べ、引張強度は約50%弱くなります。
ポリプロピレン、テフゼル*及びナイロン12は、ナイロン66より吸収率が低いため、湿度の影響はほとんど受けません。

代表的材質
ナイロン12
ポリプロピレン
テフゼル*
デルリン**
PEEK
ステンレス

【耐候性】

太陽光線に含まれている紫外線は、照射している物質、特にプラスティックの分子構造を破壊して、その属性を浸食します。材質が破壊されると色があせ、表面の光沢も失せて脆くなります。また、引張強度と伸長度が減衰します。
耐候性ナイロン66及び耐候性ポリプロピレンに含まれている「カーボンブラック」は、最も効果的な安定剤の一つとして知られています。カーボンブラックを混合させることにより、物理的な特性を損なうことなく耐紫外線性を増強します。またテフゼル*のような特殊プラスティックは、本質的に耐紫外線性が強く、安定剤を添加する必要はありません。

代表的材質
耐候性ナイロン66
耐候性ナイロン12
耐候性ポリプロピレン
テフゼル*
デルリン**
ステンレス

【耐化学薬品性】

結束バンドの寿命を決める要因はいくつかありますが、化学薬品に対する耐久性は、重要な要因の一つです。その多くの化学薬品も、濃度、温度、圧力および紫外線等の要因によって、プラスティックへの影響の度合いが異なってきます。
例えば、右記の材質は耐化学薬品性を持つ材質です。使用する化学薬品に対して適切な材質を選択する必要があります。

代表的材質
ポリプロピレン
耐候性ナイロン12
テフゼル*
PEEK
ステンレス

【耐熱性】

プラスティック材料は、通常、高熱にさらされると酸化して、特性が劣化します。最高使用温度は、その使用環境及び材質そのものに左右されます。
プラスティックは、高温度下では、まず弱く、柔らかくなります。そして、時間が経つと酸化が始まり、脆化します。その脆化によって、結束バンドは衝撃と振動に微妙に影響され、環境不適合となる可能性があります。低温下でもプラスティックは脆化しますが、室温に戻されれば材質特性の劣化は極めて少量になります。
テフゼル*、PEEKのような特殊プラスティックは、150度を超える高温化でも性能を維持することができます。

代表的材質
耐熱性ナイロン66
ポリプロピレン
テフゼル*
PEEK
ステンレス

【難燃性】

結束バンドは、難燃性のグレードが定義されています。右記の材料はUL94V-0の難燃グレードに該当します(ステンレスは不燃性)。
各材質の難燃性を評価、比較するための試験方法が、ULとASTMで規定されています。

代表的材質
難燃性ナイロン66
エラストマー
テフゼル*
PEEK
ステンレス

【耐放射線性】

結束した状態で各材質の結束バンドを異なる放射線量の放射線に当てて、許容放射線量を決定します。
各試験は、主要なメーカーが実施しており、原子力関連施設での様々な場所における結束バンドの耐候性試験(40年ライフの加速試験など)も行っています。

代表的材質
テフゼル*
PEEK
ステンレス

【ループ引張強度】

結束バンドは、材質、長さ及び最小ループ引張強度で選択されます。
最小ループ引張強度は、SAE(航空宇宙)規格のAS23190に基ついて表示されています。
ループ引張強度は結束バンドの幅によって異なりますが、ポリプロピレンの材質自身の引張強度はナイロン66の1/2~1/3と弱く、同じ幅の結束バンドであってもループ引張強度は異なるため、結束バンド選択の時に考慮しなければなりません。

  *テフゼルはDuPont社の登録商標です。
**デルリンはDuPont社の登録商標です

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